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Рюноскэ Акутагава – 羅生門 他 / Ворота Расемон и другие рассказы. Книга для чтения на японском языке (страница 2)

18

B あすこへ行くようになってからもう一年になるぜ。

A 早いものさ。一年前までは唯一実在だの最高善だのと云う語に食傷《しょくしょう》していたのだから。

B 今じゃあア トマンと云う語さえ忘れかけているぜ。

A 僕もとうに「ウパニシャッドの哲学よ、さようなら」さ。

B あの時分はよく生だの死だのと云う事を真面目になって考えたものだっけな。

A なあにあの時分は唯考えるような事を云っていただけさ。考える事ならこの頃の方がどのくらい考えているかわからない。

B そうかな。僕はあれ以来一度も死なんぞと云う事を考えた事はないぜ。

A そうしていられるならそれでもいいさ。

B だがいくら考えても分らない事を考えるのは愚じゃあないか。

A しかし御互に死ぬ時があるのだからな。

B まだ一年や二年じゃあ死なないね。

A どうだか。

B それは明日にも死ぬかもわからないさ。けれどもそんな事を心配していたら、何一つ面白い事は出来なくなってしまうぜ。

A それは間違っているだろう。死を予想しない快楽ぐらい、無意味なものはないじゃあないか。

B 僕は無意味でも何でも死なんぞを予想する必要はないと思うが。

A しかしそれでは好んで欺罔《ぎもう》に生きているようなものじゃないか。

B それはそうかもしれない。

A それなら何も今のような生活をしなくたってすむぜ。君だって欺罔を破るためにこう云う生活をしているのだろう。

B とにかく今の僕にはまるで思索する気がなくなってしまったのだからね、君が何と云ってもこうしているより外に仕方がないよ。

A (気の毒そうに)それならそれでいいさ。

B くだらない議論をしている中に夜がふけたようだ。そろそろ出かけようか。

A うん。

B じゃあその着ると姿の見えなくなるマントルを取ってくれ給え。(Aとって渡す。Bマントルを着ると姿が消えてしまう。声ばかりがのこる。)さあ、行こう。

A (マントルを着る。同じく消える。声ばかり。)

夜霧が下りているぜ。

×

声ばかりきこえる。暗黒。

Aの声 暗いな。

Bの声 もう少しで君のマントルの裾をふむ所だった。

Aの声 ふきあげの音がしているぜ。

Bの声 うん。もう露台の下へ来たのだよ。

×

女が大勢裸ですわったり、立ったり、ねころんだりしている。薄明り。

–―まだ今夜は来ないのね。

–―もう月もかくれてしまったわ。

–―早く来ればいいのにさ。

–―もう声がきこえてもいい時分だわね。

–―声ばかりなのがもの足りなかった。

–―ええ、それでも肌ざわりはするわ。

–―はじめは怖《こわ》かったわね。

–―私《あたし》なんか一晩中ふるえていたわ。

–―私もよ。

–―そうすると「おふるえでない」って云うのでしょう。

–―ええ、ええ。

–―なお怖かったわ。

–―あの方《かた》のお産はすんで?

–―とうにすんだわ。

–―うれしがっていらっしゃるでしょうね。

–―可哀いいお子さんよ。

–―私も母親になりたいわ。

–―おおいやだ、私はちっともそんな気はしないわ。

–―そう?

–―ええ、いやじゃありませんか。私はただ男に可哀がられるのが好き。

–―まあ。

Aの声 今夜はまだ灯《ひ》がついてるね。お前たちの肌が、青い紗《しゃ》の中でうごいているのはきれいだよ。

–―あらもういらしったの。

–―こっちへいらっしゃいよ。

–―今夜はこっちへいらっしゃいましな。

Aの声 お前は金の腕環《うでわ》なんぞはめているね。

–―ええ、何故?

Bの声 何でもないのさ。お前の髪は、素馨《そけい》のにおいがするじゃないか。

–―ええ。

Aの声 お前はまだふるえているね。

–―うれしいのだわ。

–―こっちへいらっしゃいな。